土木・鉄骨構造物・木材締結・電気・給排水・建具・家具など、建築・木工の多岐にわたる必要をカバーするための数多くの製品が開発されてきました。それぞれの目的、相手材に合わせて最適な製品を選ぶことにより、安全性を確保し、作業効率を上げ、コストの低減やメンテナンス性の向上に貢献します。
最近では、“人にやさしい” “地球にやさしい” 素材・形状・表面処理も多数開発され、持続可能な世界に貢献することが可能です。また、より高い安全性を担保するための高強度製品も開発されています。
アイボルト
頭部がリング状になっているボルトです。設機器等に取り付け、リングの部分にフックやロープ等を引っ掛けて吊り上げる、またはコンクリート等に埋め込み、そこにチェーン等を繋げて使用することもあります。リングを下の部材に固定する事が目的のため、ねじ部の長さの種類は少なく標準品と足長品の2種類が一般的です。高強度、耐食性の製品もあります。
重荷重のかかる用途が多いため、リングの部分に破断や変形が生じないよう保証荷重が定められています。一点吊り(垂直吊り)のほか、二点吊り(45度吊り)、四点吊り(多点吊り)などの使用方法もあります。しかし一つの対象物については、ボルトの使用個数には関係なくそのボルトサイズの使用荷重が適用されます。何本使っても使用荷重は一本吊りと同じです。
軸に対して360度、吊り上げ方向に対して180度回転するマルチアイボルトもあります。JISアイボルトに比べ3倍の使用荷重になります。横吊り、斜め吊り、引き起こし作業等にも対応でき、使用しないときには頭部を倒すことができるため、省スペース・安全性にも貢献します。
ねじはいずれも全ねじになります。
寸切
長ねじや全ねじボルト・総ねじボルトと呼ばれている頭部の無いねじで、全体がねじ部になっています。必要に応じて現場で好きな長さに切断したり、短く切断して工具部品としても利用できます。ナットを両側に取り付け長さを調節したい場合に使われます。長さは285mmか1000mmが定尺と呼ばれ一般的ですが、数メートル近くあるものも製造可能で、大きなものは建築材料としてよく用いられます。
頭部形状は専用機械で平らに処理したもの、切りっぱなしの荒先、撹拌式ケミカルアンカー用等用途に合わせて選択可能です。ねじ山が台形の形状の台形ねじは「送りねじ」「すべりねじ」などと呼ばれ、締結用ではなく工作機械などのシャフトで回転運動を直線運動に変換し対象物の位置調整の目的で使用されます。
高強度寸切BUMAX®は、耐熱性・耐食性・非磁性に優れ、強度を落とすことなくボルトの径を下げることができるので、製品のコンパクト化・軽量化に有効です。
グラインダーなどで寸切りボルトを切断すると、切断した寸切りボルト(長ねじ)の切断面のねじ山がつぶれやすく、ナットが入りづらくなります。この場合、「全ねじカッター」と呼ばれる専用工具で切断するか、先にナットを寸切りボルトに通してから切断することで対処可能です。素材が鉄のものを切断する場合は、切断面が錆びやすいので注意が必要です。
アジャストボルト・ナット
水平保持や高さ調整を目的に、自動販売機や制御盤・作業台・家具などの下部に設置する、上下の調節が出来る回転する受座の付いたボルトで、アジャスター、アジャスターボルトとも呼ばれます。六角ボルトや寸切ボルトと組み合わせてアジャスター機能を付与できるナット型もあります。
重量物用や家具用、コーナー用や耐震用など様々なタイプと幅広いサイズが特徴で、意匠性に優れたものありますので用途に合わせて選択可能です。床面に芯棒を打込む固定用や、後施工で固定できる脚止め金具もあります。最近ではDIYで建物を傷つけずに柱を立てたり、地震発生時の家具の転倒防止等使用範囲が広がっています。
全く新しいタイプの耐震材 “ノンブレンNonBuren”が組み込まれた地震対策向けのアジャストボルトは、自己接着(粘着)能力と緩衝(耐震・衝撃吸収)能力をあわせ持つ優れたゲル材ノンブレン(NonBuren)を使用しています。耐久性・耐熱性・耐油性にも非常に優れ、半永久的に使用可能で、地震対策に加え、ベルトコンベアや半導体製造装置などの精密機械の防振などに採用されています。
建築・木工系ボルト
釘やねじに加え、昔から様々な部品が開発されています。木材を直線や直角に連結させる「かすがい」をはじめ、連結部分の取り外しが可能なハンガーボルト、取り付けの相手形状に合わせてタイプを選択可能な屋根材固定用フックボルトなどがあり、美しい仕上がりとしっかりした固定、メンテナンスのしやすさに貢献します。
ハンガーボルトは、主に机の脚、家具などの取外し可能な連結部分に使用される、通常のねじとコーチスクリュー(コーチねじとも呼ばれるピッチの荒い強力な木ねじ)が一体となったボルトです。頭部のない棒状で、一端が尖ったコーチねじ部、反対側は円筒形の通常ねじです。
コーチ部を母材に捻じ込み、ねじ部に相手材の雌ねじ(鬼目ナットなどのインサートナットや六角ナットなど)を組み合わせ連結します。鬼目ナットとなら、金具を見せずにスマートに連結出来ますので、木製ノックダウン家具(組立家具)などに利用されます。また、ノブナットなどの手締めねじと組み合わせると簡単に木製品に取手・引手をつけることも出来ます。
高ナット
通常の六角ナットより高さが高いことから“高ナット”と呼ばれ、長ナットやロングナット、継ぎ手ナット・スペーサーナットとも呼ばれることもあります。主におねじ同士の結合や高さなどの調整に使用され、自動車・バイク・建築・機械メンテナンス・自動販売機の高さ調整やプリント基板取り付けなど幅広く活用されています。六角ナットより長いことから、脱着時に落下の心配も少なく手動調整用としても活躍します。
細目・ウィット製品もあります。
サイズ表記は、呼び径×六角対辺(二面幅)×高さ(長さ)となります。
アイナット
ナット頭部のリング部分を目(eye)に見立てて”アイナット”と呼ばれています。吊りナットとも呼びます。キュービクル・工作機械・モーターなどの重量物に取り付け、リングにワイヤーなどを通し吊り上げます。頭部がリング状になったボルト(アイボルト・吊りボルト)もあります。
アイナットは重量物を吊り上げる目的で使用し、その破損は大きな事故に直結する為、重要保安部品とされています。「安全の為に・受け側の材質は鋼または鋳鉄とし、植込ボルトの精度、材質、ねじ長さは、アイボルトに準じたものとする・引き起こしや横吊りには使用しない・2個のアイナットのリングの向きは同一平面同一方向にする」などをお守りください。
また、使用荷重を守ってください。一つの対象物について垂直吊りや45度吊りなどの使用個数に関係なく、そのボルトサイズの使用荷重が適用されます。
鬼目ナット
組立て・解体や着脱を繰り返す組立構造方式家具にボルト接合用めねじを設置するために開発された木材向けインサートナットです。木製の家具などを簡単に分解して運搬し、現地で組み立てる事(ノックダウン式)を可能にし、現地での高強度・高精度の組み立てを簡単に行うことが出来ます。組み立て家具や脱着を繰り返す箇所にも最適です。
また、バカになったねじ穴を補修するためにも大変有効です。
鬼目ナット胴体部の外周にはギザギザや羽のような出っ張りがあり、母材に開けた下穴にねじ込むまたは打込むと、その出っ張りが相手材へ食い込み固定されます。木材に雄ねじを組み込める「ハンガーボルト」や、ユニット家具等の組立用に開発された「ジョイントコネクターボルト」を用いることにより、木製部材をしっかりとつなぎ合わせることが可能となります。
鬼目ナットには大きく分けて‘打込み式’と‘ねじ込み式’、また‘つば付’と‘つば無’の2つのタイプがあります。
ジョイントコネクター
呼び径をM6(並目)に統一し、簡単・確実に高精度な木材製品の構造体の接合をシステム化するために開発されたボルト・ナットです。工場で部材を生産し現地で組み立てる「ノックダウン方式」を大型家具でも可能にしました。輸送コストを大幅に抑え、搬入問題を解決。そのため組立家具のみならず、ユニット家具やキャビネット等に幅広く採用されています。
座面が広いため、高トルク締結時の陥没や化粧材の傷付きを防ぎ、接合部の直角度を確保しやすく、美観・強度・直角度を必要とする箱物・脚物等にも利用可能です。
荷重のかかる大型構造体や重量物等に適したタイプや、接合力と経済性の両立を目指したものがあり、(±)プラスマイナスドライバや、より強い力で締結でき作業スペースを節約できる六角レンチなど、工具に合わせたリセスも選択できます。
頭部に樹脂キャップをかぶせ安全性や意匠性を高める従来のものに加え、キャップを必要としない意匠性の高いものも開発されています。
建築・木工用ビス
建築用ビスは、木材同士・木材と金物・石膏ボード取り付けなど、必要とされる強度や相手材によって様々な製品が求められます。
コーチねじやコーチボルトとも呼ばれる六角コーチスクリューは、建築・土木・造船業界や耐震補強金物の取り付けにも用いられます。
鋼板や硬質ボード、木材を構造用鋼板に固定するドリルねじは、下穴あけ、タップ立て、締め付けをねじ一本で行うことが可能です。
コーススレッドもセルフタッピングねじで、半ねじは組立・全ねじは補強の役目を果たします。一方、木ねじは下穴を必要としますが、釘の代わりとしてより高い精度、美しい仕上がりを期待できます。
薄い鋼板下地に下穴なしに石膏ボードを施工できる軽天ビスは、垂直性や直進性が高く作業効率に優れています。
大量に施工することが求められるこれらのビスは、インパクトドライバなどの電動工具を使うことができるので作業効率が上がり、取り外しも可能なためリフォームにも適しています。
アンカー
建設現場で使われることの多いアンカーは、相手材・必要とされる強度・目的により、様々な製品が用いられます。
金属系アンカーは一般的に、相手材にあらかじめ穴をあけ、アンカーを打ち込むまたは締め付ける方法で施工します。
ケミカルアンカーと呼ばれる接着系アンカーは、あらかじめ開けた穴に接着剤の入ったカプセルを設置もしくは薬剤を注入し、その後アンカー筋を埋め込み硬化させます。
その他、プラスチック系打ち込み式、金属やプラスチックの受けをあらかじめ設置してアンカー筋をねじ込むねじ込み式、中空壁用挟み固定式、ねじ固定式があります。