ピン ・ キー ・ 止め輪は、主に位置決め・抜け止め・固定のために用いられ、産業機械をはじめ、あらゆる業界の多種多様な製品に用いられています。軸と歯車・ブーリー・ボスを固定するためのピンやキー、部品同士の締結を固定する割ピン、軸方向への抜けや移動を防ぐ止め輪などがあり、形状やスペックも多岐にわたります。
平行ピン
頭の無い円筒形の平行ピンは、機械や治具などの各接続部材へリーマ穴を設けて打ち込み、固定や位置決め用として使います。平行ピンを組込むことで高い精度での組付けが行え、メンテナンス時の分解・再組立てで高い再現性を持たせることができます。
A種は端面の片方が平先もう一方は丸先、軸部許容公差がプラス目(はめ合い公差m6)です。B種は両端面とも平先でマイナス公差(h7)となり精度がやや劣ります。ピンを引抜き易くする内ねじ付きもあります。
素材はS45C(機械構造用炭素鋼)やステンレスが用いられ、耐食性に優れたステンレスは海水ポンプ・配管部品・バルブ・食品機械に適しています。
テーパーピン
テーパーピンは主に「固定」や組立て時の「位置決め」・再組立て時の「再現精度」という目的のために用いられる機械要素で、機械部品や治具に設けたリーマ穴へ打ち込んで使います。先端方向に向かって次第に細くなっている1/50テーパー(50 mm進むと1 mm細くなる)の円筒形をしており両端は丸先、はめ合い公差はプラス目(H9)です。引抜き易く出来る内ねじ付きや他の部品と組み合わせ出来る外ねじ付きのテーパーピンもあります。
機械構造用炭素鋼やステンレスが使用されており、耐食性が必要な場合にはステンレスを用います。
位置決めや再現性の向上を目的で用いられるテーパーピンと平行ピンとの使分けの目安として、予め機械によるリーマ穴加工が出来る場合は平行ピン、組立て調整後にリーマ加工をする場合はテーパーピンと言われています。
ダウエルピン
ノックピンやダボピンとも呼ばれるダウエルピンは、二つの部材のリーマ穴に突き入れ接合させるピンなので “dowel pin(英)”の名称で呼ばれています。(材木と木材を接合する際に用いる “ダボ”の英名は“dowel”)。組立て時の位置決め、再組立て時の再現性(元通りに精度よく組み立てること)を得るために使用します。平行ピンと比較して高精度・高強度の為、再組立てが多い箇所や金型等に使用されます。
エア抜き溝付き背品は、袋穴へ挿入すると生じる逃げ場を失った空気により押し戻されピンが抜けてしまうトラブルを避けることが出来ます。また、螺旋状の溝はピンの向きに配慮する必要もなく作業効率が高まります。 メートルサイズやインチサイズ、ノックアウターによって引抜きが可能な内ねじ付もあります。
スプリングピン
ばね性がある板を円筒状に丸めたピンでスプリングロールピンとも呼ばれます。ピンの外径よりも僅かに小さい相手穴に挿入することで弾性力により挿入穴へセルフロックします。位置決め、ヒンジの回転軸、部品の締結やストッパーなど様々な役割を果たします。挿入する穴はドリル穴で良く、平行ピンやダウエルピンの様なリーマ加工を必要としません。また中空のため軽量でたわむことにより振動による脱落に強いという特徴もあります。
先端は両面共に面取りがなされていて溝が真直ぐで引っ掛かりが少ないので挿入し易くなっています。
動的荷重・衝撃荷重が加わる箇所に適した溝が縦に真直ぐなストレートタイプ、波形の山と谷が交互にたわみ内壁に円周全体で接するため、回転運動が滑らかでヒンジ部との相性も良く自動挿入に適した波型、アルミ・樹脂などの相手材に適している薄板の波形スプリングピン軽荷重用があります。
各種ピン
脱落防止や回転防止、抜け防止などの目的で自動車や鉄道車両、工作・建設機械など様々な場所で使用されるピンです。
割ピンは、ボルトやシャフト(軸)の下穴へ挿入し軸部を広げる(曲げる)ことで割ピンが穴から抜けなくなり被締結物の回転や脱落を防ぎます。JIS規格でピンを「外側に約90度往復3回繰り返して折り曲げても、割れが生じてはならない」こととされていますが、原則割ピンの再利用はしません。
Rピンとも呼ばれる松葉ピン、スナップピンは、ピンの直線部分をピン穴に差し込み、湾曲したR部で挟み込むことにより、回り止めや抜け止め・連結の位置決めを行います。割ピンと比較してピン穴へ挿入するだけで機能し取り外しも簡単、再利用も可能という利点があります。ただし、振動等により抜け落ちることがあるので確実な落下防止としては割ピンを使用します。
マシンキー
平行キー・マシンキー・スッピルキー・シャフトキーなどと呼ばれるマシンキーは、軸(シャフト)と歯車等をすべらないように締結させて軸からの回転力を歯車等へ効果的に伝えるために利用する機械要素です。ボス(軸と締結する機械要素)にはキーをはめ込む溝を加工し、重荷重用(動力伝達用)には軸にキーをはめ込むためのキー溝が有る「沈みキー」として、軽荷重用には軸にキー溝が無い「平キー」や「くらキー」として利用します。通常は汎用性の高い平行キーが「沈みキー」として用いられますが、十分なトルク伝達が行えない場合に勾配キーが用いられます。テーパー軸には加工のしやすさから半月キーが主に用いられます。
軸の太さに対応するキーの幅と高さサイズ、対応するキー溝等も規定されていますのでシャフトが決まれば対応するキーのサイズも決まります。
キーの大きさはJISで規格化されていますが、1972年のJIS規格改定時に寸法と公差が大幅に見直しされているので新JIS、旧JISが存在します。
C形止め輪
円状に溝加工された軸に沿ってはめ込み使用する“スラスト方向取付タイプ”と呼ばれる止め輪の一種です。部品の固定のほか、位置決めや抜け止めにも使用されます。外観がアルファベットのCに似ている事からC形呼ばれ、リテーニングリング・サークリップ・スナップリングとも呼ばれます。
軸を外から挟みこむ軸用、穴の中に設置して穴用止め輪として使用する穴用があります。取り付けにはそれぞれ、軸用にはC形止め輪用プライヤー 軸用、穴用にはC形止め輪用プライヤー 穴用が必要です。
E形止め輪
軸に加工した溝に垂直に取り付ける“ラジアル方向取付タイプ”と呼ばれる軸用止め輪の一種です。見た目がアルファベットの『E』のような形からこの名が付いており、Eリングとも呼ばれます。内側の3ヵ所の突起により固定し、軸、シャフトに部材の位置決めや抜け止めに使用されます。ばね性を持った弓型もあります。
一定数量をテープで止めたスタックタイプは、専用スタンドに収納が簡単で、取り付け工具で一枚ずつ取りやすく、作業効率アップに貢献します。
各種止め輪
位置決めや抜け止めとして使用される止め輪には、様々な条件や用途に対応した製品があります。
C形止め輪と同じスラウト方向(軸に対して平行方向)から取り付ける止め輪には、溝加工の必要な丸R形、丸S形、へベル型(軸用、穴用)があり、相手材への干渉軽減や相手材のばらつきによるがたつきに有効です。また、溝加工を必要としないプッシュナット(軸用・穴用)、CR形、CS形は、自由な位置に固定できます。
E形止め輪と同じラジアル(軸に対して直角)方向取り付けタイプは溝加工が必要で、狭い場所での使用が可能なクリセント形、E形止め輪に比べてスラスト荷重が高いU形、K型などがあります。