一般的には座金とも言われ、ボルトを締結する際に相手材とナットの間に挟むことにより、抜け防止や座面の傾き・凹凸の補正、座面陥没やナットの回転を防止する役割を果たします。さらにねじを締め付ける際の力をワッシャーの面圧に分散させることによって、締め付けた部品の傷防止につながります。ワッシャーには特殊な寸法を含めると非常に多くの種類が存在しています。一般に市販されている規格品でも旧JIS規格とISO規格(新JIS)などがあり、寸法が若干違います。
ISO規格(新JIS)は新しい規格でこれからの流通性を考慮すれば、ISO規格(新JIS)に統一して使用する方がよい選択かもしれません。
丸ワッシャー
締結する際、被締結材とボルトやナットの間に挟み込む平らで円形の部品です。ワッシャーを挟むことでボルト(ナット)の摩擦係数を一定に保ち締結を安定させます。また、ボルト・ナットの座面より広い面積で相手材に接するので面圧が下がり、締結時の部材の変形を防ぎます。より高トルクでの締結で軸力が高まり、外力を原因とするゆるみに対して強くなります。さらに締結後も部材の接地面が変形・陥没しにくくなり、軸力が抜けてねじがゆるむことを抑えられます。 他にも締結時のボルトやナットの回転による傷付けを防止、また長穴や大きなボルト穴でも締結を可能にするためにも使用します。高強度品・木材用・高い軸力に対応した製品・絶縁目的の樹脂製品もあります。
旧JIS規格(JIS B 1256:1963)が現在でも主流で、一般的に平座金JISや丸平ワッシャーというと旧JIS規格品を指しますが、ISO規格品へと移行されていく傾向があります。
スプリングワッシャー
平座金の一部をカットしてひねったような、あるいはコイルを一巻き切り取ったような形状をしている座金です。ばね座金とも呼びSW(SPRING WASHER)と略します。通常ボルト(ナット)と平座金の間に挟み込んで使用します。変形した金属が元に戻ろうとする性質(弾性力)を利用して、機械による自動締め付けのセンシング対応として、また締め付けトルクの弱い締結のゆるみ止めや、ゆるんでしまったボルトの脱落防止としても利用されています。色々な素材や表面処理、規格に対応しているので、使用するねじ・ボルト形状に合わせて選択可能です。
SEEGER-ORBIS(ゼーガーオルビス)社は高品質な処理仕上げがなされた特殊なスプリングワッシャーを製造しています。
確実なゆるみ止め対策が必要な場合は、あと施工も可能なペタルファスナー、ワッシャータイプのリブドロックワッシャーやノルトロックワッシャー、ナットタイプのUナットやハードロックナットなどのゆるみ止め対策製品の利用をご検討ください。
ボルトの呼び径サイズと合わせてご使用ください。
テーパーワッシャー
角ワッシャーの上面がテーパー(先細りする形状のこと)の傾斜面となっています。テーパー座金・傾斜座金とも呼びます。
テーパーワッシャー5°は、機械や建築に広く用いられているコの字型の形鋼材「溝形鋼(重量溝形鋼一チャンネル」に使用します。溝形鋼のフランジ(コの字型にした時の上下のフラップ)には5°のテーパー角度がついているため、テーパワッシャー5°を使用することでナット(ボルト)との接触面をフラットに保って確実に締結することができます。
I(アイ)形鋼(ジョイストやアイビームと呼ばれる)のフランジに合わせた8°、レールのフランジに合わせた13°、ウィット規格のウィット8°もあります。
機械等の固定・設置の際に角度調整などにもご利用いただけます。
皿ばね
「皿ばね」は、上下運動を行う箇所への機械的用途を目的とした商品で、コイルばねと同じ使用用途となり、省スペースで高反発力を得ることが可能になります。振動の緩和やゆるみ止めなどに使用します。
他方、「皿ばね座金」はコニカルスプリングワッシャーとも呼ばれ、ボルトや六角穴付ボルト用のゆるみ防止として使用します。薄い円錐台形状になっており、被締結材とボルト・ナットの間に挿入して押しつぶす形で締結します。軸力の保持能力が高いためゆるみ止めとして効果的に働き、軸力の低下を補うことが出来ます。軸対称の形状でボルトの軸力を座面で均等に支持でき、ボルトに曲げモーメントが働かないというメリットもあります。
「皿ばね」と「皿ばね座金」は使用用途が異なり、規格寸法なども異なります。
ロックワッシャー
ボサードオリジナルブランド品「リブドロックワッシャー」は、ドイツ生まれの標準安全座金Schnorr(シュノール)ワッシャーです。非常に硬い素材のワッシャー両面に成形したテーパー形状のリブ(うねり)がボルト座面と母材の被締結部に食い込むことにより、ゆるみ止め効果が得られます。また外周側が最厚となる台形断面をした皿バネ状になっており、締結時の変形による反発力によってボルトに軸力を長時間保持させるので、特に振動の激しいところでゆるみ止め効果を発揮します。
リブ面が外側、カム面が内側となるように2枚1組で利用する「ノルトロックワッシャー」は、軸力を利用して回転ゆるみを防ぐ「ウェッジロッキング機構」のゆるみ止めワッシャーです。振動などでゆるみ方向への回転が起こっても、カム角度はねじリード角よりも大きく設計されてカムを乗り越えられず、カム面がスライドしてくさび状に厚みが増加、締結体が引っ張られ軸力が増しゆるみを防ぎます。
標準工具で締結・取り外しができ、再利用可能なロックワッシャーは、メンテナンスの省力化が図れるワッシャーとして定期的に脱着する場所に最適です。
歯付きワッシャー
菊座金・ロックワッシャー・スターワッシャーとも呼ばれる歯付ワッシャーは、外側や内側に歯をつけ、その歯を絞り立ち上げた突起を持つ座金です。他の座金と同様に締結の際ねじ・ボルトやナットの着座面と被締結材の間に挟み込みます。この「歯」がばねとなり反発力を生み、また接合面に「歯」が食い込むことでねじのガタツキやゆるみを防止し、回り止めとして機能します。またアース端子の取り付け部など導線確保を目的に使用することもあります。
内外両側にある内外歯付き、皿頭に使用することのできる皿形歯付きがあり、用途や相手材に応じて選択可能です。
角ワッシャー
角形座金とも呼ばれる正方形のワッシャーで、主に木材などの比較的柔らかい相手材に使用されます。丸座金よりも着座面が広いので陥没を防ぐ効果が高くなります。また丸座金よりも厚く変形しにくいためボルト穴が大きい場合にも使用します。一般的なメートルねじ(呼び径サイズ先頭M)、建築業界で広く使われているウィットねじ(呼びサイズ先頭W)、どちらの規格でも使用可能です。
小形タイプや大形タイプなどがあり、用途に合わせた大きさが選択可能です。またステンレス製や切り欠きが便利であと施工が可能なU字形タイプ、規格以外の外辺長さ(対辺)が選べる特寸もあります。
各種ワッシャー
特殊な形状により付加機能を持たせたワッシャーはたくさんあります。
コイルばねから置き換えることで機器の小型化を図ることができるウェーブワッシャーは、デジカメやスマホのレンズ固定具から自動車部品や工作機械まで幅広く利用されています。
薄板等ザグリ加工を行えない場所へ皿頭ねじを使用したい場合に活躍するローゼットワッシャーは、引っ掛かりを防ぎ安全性を高めることもできます。更にトライウイング皿小ねじ等との組合せはいたずら防止効果を高めます。
舌のように見える出っ張りがある舌付きワッシャーは「舌」をワークの突起等に引っ掛ける様にセットしたり、ねじ締め後にワークの角や設けた溝へ折り曲げたりしてワッシャーを固定することができ、効果的なゆるみ止めとなります。
また、耐油性・耐熱性・耐候性・耐摩耗性に優れたNBR(ニトリルゴム)製シールドリングが組み込まれたシール座金は、20MPa×1分間の防水試験をクリアする高防水性能を発揮します。
その他、座面陥没防止機能やエア抜き機能を持ち合わせたものもあります。
連結金具ワッシャー
連結ワッシャーとも呼ばれる座金で、家具に皿ねじや木工用ビス(コーススレッド)を固定するために使用します。
ボルトやステーなしで直角に連結でき、製品の強度を高めることができます。座ぐりの必要がないため作業効率も上がり、薄物・柔らかい素材も連結可能になります。ビス頭を隠す連結キャップとセットで使用するため、家具を美しく仕上げるとともに、ビス頭の引っ掛かりをなくして安全性を高めることにも貢献します。
家具・組み立て家具・DIYに用いられます。素材も金属やナイロンなど、使用場所や目的に合わせて選択可能です。連結キャップとセットで使用します。
樹脂ワッシャー
軽量・絶縁性・非磁性に優れた樹脂ワッシャーは、電子回路・半導体・電子機器をはじめ多くの分野に使用されています。耐薬性・耐熱性・耐食性に優れた様々な素材が開発されており、樹脂製品へ使用することにより、分別廃棄の必要もなく地球環境にやさしい製品です。
ザグリ加工が必要なねじ専用のローゼットワッシャーや、組込み用のセムスワッシャー、摩擦係数が少なく、耐クリープ性・熱伝導性が良好で、自動車部品や電気製品・カメラなどの摺動・回転部品に適しているポリスライダーワッシャーなど、環境への配慮と高機能を併せ持つ次世代の製品が次々と開発されています。