解体分析エキスパート 第4回:カーナビゲーションの解体分析
こんにちは!
「解体分析エキスパート」第4回をお届けします。今回の対象は、車載機器として欠かせない「カーナビゲーション」です。前回の電子レンジとは異なり、カーナビは多くの電子部品・精密機構・表示装置を内蔵するため、締結部品の選定や配置には高度な工夫が求められます。今回の解体分析では、使用されている締結部品の種類・材質・表面処理や、ゆるみ防止策まで詳しく調査しました。


カーナビゲーションならではの構造と特徴
カーナビゲーションは、GPS受信部、液晶ディスプレイ、制御基板、スピーカーや各種センサーを内蔵しており、振動や温度変化にさらされやすい環境下でも正確に作動する必要があります。そのため、締結部品の選定や配置は、耐振動性・耐久性・安全性を重視した設計になっています。

注目ポイント①:締結部品の種類
本カーナビゲーションの総締結部品は153個で構成されており、基板の固定や機構部品の保持、振動対策など、用途に応じて使い分けられています。

まず、ねじ込みトルクが低く、高い締付け力と耐振性を持つタップタイト(DIN7500)ねじは58個(38%)を占め、特にM2.5×5サイズが33個と最も多く使用され、主に主要部品の固定に用いられています。

また、M2.5×3のねじにはゆるみ止め剤が塗布されており、使用中の振動や衝撃による緩みを防ぐ工夫がなされています。さらに、シンワッシャー頭のねじやその他のサイズのタップタイトねじも併用され、締結力と信頼性のバランスが保たれています。
タップタイト以外の締結部品は95個で、振動吸収用のばね18個、樹脂製ワッシャー20個、波ワッシャー2個など、製品の耐振動性や応力分散を考慮した部品が多く含まれています。

さらに、マイクロねじや皿頭小ねじにはゆるみ止め剤の塗布や頭部径の拡大など、局所的な緩み防止や強度向上の工夫が見られます。ピンやスペーサーなどの補助部品も使用され、組み立て精度の確保や部品間の干渉防止が図られています。このように、タップタイトねじを中心に、多種多様な締結部品を組み合わせることで、振動・衝撃への耐性と全体の信頼性が確保された設計となっています。



注目ポイント②:ばねの多用
カーナビゲーション内部では、振動吸収や機構部品の安定化などを目的として、ばねが18個使用されていました。

多数のばねが使われているのは、操作性・耐久性・安全性を同時に確保するためです。具体的には、ボタンやダイヤルの押下後に元の位置に戻す力やクリック感を与える復帰、スイッチや接点の安定化による確実な通電、CDトレイやSDカードスロットなどのモジュールの位置固定や押し出し動作、車内振動や衝撃から精密部品を保護する衝撃吸収、さらにスライドや回転などの機械的動作をスムーズに制御する役割など、多様な目的で使用されています。これにより、ばねは小さくてもシステム全体の機能や操作感を支える重要な部品となっています。

注目ポイント③:ゆるみ止め剤
カーナビゲーションのマイクロねじや小ねじ全78個のうち、29個(37%)には、使用中の振動や衝撃による緩みを防ぐため、ゆるみ止め剤が塗布されていました。

これは、車内の走行中に発生する繰り返しの振動や急加減速によってねじが徐々に緩むと、固定されている部品の位置ずれや接触不良、動作不良の原因となるためです。特に、精密な電子部品や機械部品が多く組み合わさるカーナビでは、わずかなねじの緩みでも操作性や信頼性に大きな影響を及ぼす可能性があります。ゆるみ止め剤を用いることで、ねじ同士の摩擦力が増加し、振動に対する耐性が向上するため、長期使用でも部品を安定して固定し、機能を維持することが可能となります。

解体結果と考察:精密電子機器に求められる締結設計
カーナビゲーションは、電子部品・精密機構・表示装置を高密度に内蔵した精密機器であるため、締結部品の選定や配置が製品の性能・信頼性に直結します。今回の解体分析では、締結部品の総数は153個で、ばね・ワッシャー・マイクロねじ・小ねじの多様な活用やゆるみ止め剤の工夫が確認され、車載機器としての耐久性・安全性の確保が徹底されていることがわかりました。

改善策として、ねじ種類の統一を実施すれば、組立効率の向上、締結ミスの防止、在庫管理の簡略化による発注・保管コストの削減が期待できます。具体的には、タップタイトやマイクロねじのわずかなサイズ違いや頭部違いが多く見られたため、サイズと頭部を標準化することで、在庫管理の簡略化と組立作業効率の向上が図れます。
まとめ
カーナビゲーションの解体分析からは、振動や衝撃への対応、精密機構の安定性確保、ねじ種類・サイズの最適化、耐久性と外観のバランスといった、精密電子機器に求められる締結設計の特徴が明らかになりました。今回の知見は、車載電子機器の設計・部品選定・調達担当者にとって、貴重な参考情報となるでしょう。
次回予告:複合機(プリンター&FAX)の解体分析
次回は、オフィス向け精密機器「複合機(プリンター&FAX)」を解体分析します。電子部品と機械部品が組み合わさった構造の中で、どのような締結部品が使われ、どのような設計工夫がされているのか、詳しくご紹介していきます。