解体分析エキスパート 第5回:複合機(プリンター&FAX)の解体分析

こんにちは!
「解体分析エキスパート」第5回をお届けします。今回は、オフィス機器の中でも使用頻度が高く、電子部品と機械部品が高度に組み合わされた複合機(プリンター&FAX)を対象に解体分析を行いました。



印刷・搬送・読み取りといった複数機能を1台に集約する複合機では、耐久性・精度・量産性を同時に満たす締結設計が求められます。本記事では、締結部品の使用実態と設計意図に着目して解説します。







解体過程と構成部品の概要

解体の結果、複合機内部では樹脂部品と金属部品が用途ごとに明確に使い分けられていることが確認できました。

  • 樹脂製締結部品:歯車、スペーサー、止め輪、シャフト
  • 金属製締結部品:三価クロム処理された十字穴付き小ねじ、ばね、シャフトなど


特に締結部品は、樹脂部品への直接締結を前提としたねじ構造が多く、組立性と作業効率を重視した設計が特徴的です。

内部には制御基板、モーター、紙送りローラー、ギア機構、スキャナーユニットなどが高密度に配置されており、連続動作・繰り返し動作を前提としていることから、以下の要件が重視されています。

  • 高い耐久性
  • 振動・騒音の抑制
  • 長期使用を想定した信頼性


これらを満たすため、締結部品や機構部品の選定は製品性能を左右する重要な要素となっています。



注目ポイント①:DIN7500自己成形ねじ(タップタイトねじ)を中心とした締結構成

本製品で最も多く使用されていた締結部品は、三価クロムめっき処理された十字穴付き小ねじ(計165個、M3・M4が中心)でした。その大半がDIN7500自己成形(スレッドフォーミング)ねじで、プラスチック部品や薄板金属への締結に使用されています。



DIN7500は、相手材にねじ山を成形することで高い保持力を得られる自己成形ねじで、電化製品に広く採用されています。本複合機でも、筐体固定、駆動ユニット保持、基板固定など幅広い用途に使われており、締結力・耐振動性・量産性のバランスに優れた選定であることが分かりました。

また、パンヘッド形状やワッシャ一体型(ワッシャヘッド)、セムスのねじが多く、座面安定性や作業性を考慮した設計が随所に見られます。




特に多く使用されていた代表的なスレッドフォーミングねじは以下の通りです。

  • M4クラス パンヘッドねじ ⇒ 外装部やフレーム固定に使用され、締結強度と作業性を両立
  • M3クラス ワッシャヘッドねじ ⇒ 基板固定や機構部品に多用され、座面安定性と緩み防止に寄与
  • セムスねじ(ワッシャ組込)⇒ 部品点数削減と組立ミス防止を目的に採用


サイズや頭部形状は用途ごとに細かく使い分けられていましたが、DIN7500を軸とした標準化設計思想が一貫している点が非常に印象的でした。


注目ポイント②:機構部を支える樹脂部品と金属部品の役割分担

樹脂製部品では、スペーサー、歯車、シャフト、止め輪が多数使用され、軽量化とコスト抑制を意識した構成となっていました。一方、金属製部品では、シャフト、止め輪、ワッシャ、ばねが多用され、機構の安定動作を支える役割を担っています。

回転軸や荷重を受ける部分には金属製シャフトが使用され、耐摩耗性と寸法安定性を確保しています。
樹脂歯車+金属シャフトという組み合わせは、連続動作が多い複合機において、耐久性とコストのバランスを取る代表的な構成であり、軽量化・低騒音化・量産性向上に大きく貢献しています。



注目ポイント③:ばねの多用による安定動作と品質確保

今回の解体分析で特に印象的だったのは、ばねの使用点数が98個と非常に多い点です。ばねは、紙送り圧の調整、部品の復帰動作、振動吸収など、複合機のあらゆる動作に関与しています。



複合機特有の繰り返し動作を安定させるため、ばねは不可欠な要素であり、機構全体の信頼性を支える設計上の工夫が随所に見られました。また、一部には銅製ばねも使用されており、導電性や耐食性を考慮した材料選定がなされている点も特徴的です。これらの工夫は、印刷品質の安定化や紙詰まり低減といった、ユーザーが直接感じる品質向上につながっています。


解体結果と考察:量産機器に最適化された締結設計


本解体分析からは、DIN7500自己成形ねじを中心とした締結構成、ばねを多用した機構安定化設計、三価クロムめっきによる環境対応など、量産オフィス機器として完成度の高い締結設計が確認できました。耐久性・整備性・環境規制対応を同時に満たす設計思想が、製品全体に一貫して反映されています。



改善案:締結部品の標準化と点数最適化

一方で、わずかなサイズ違いのねじ(例:M3×8、M3×10、M3×12、M4×12)や頭部仕様、セムス有無などに多くのバリエーションが見られました。主要なDIN7500ねじを2~3種類に標準化し、ワッシャ組込仕様を統一することで、組立効率向上、締結ミス防止、在庫管理の簡素化が期待できます。



また、ばねについても一部を樹脂弾性構造で代替、あるいは仕様統一を進めることで、部品点数削減と品質安定化につながる可能性があります。締結部品の最適化は、コスト低減だけでなく、製造現場と品質管理の両面で有効な改善策といえるでしょう。



まとめ

複合機(プリンター&FAX)は、電子部品と機械部品が高度に融合した製品であり、締結部品の選定と配置が製品性能と信頼性を大きく左右します。本解体分析から、DIN7500自己成形ねじを核とした締結設計と、ばね・樹脂部品を組み合わせた機構設計が、量産性と耐久性を高い次元で両立していることが明らかになりました。

本記事が、複合機や類似オフィス機器の設計・部品選定・調達に携わる方々にとって、実務的なヒントとなれば幸いです。



次回予告:ロボット掃除機の解体分析

次回は、ロボット機器として急速に普及しているロボット掃除機を解体分析します。走行・衝突・落下検知・バッテリー固定など、これまでとは異なる締結設計の工夫に注目して解説します。どうぞお楽しみに。


類似投稿