ファスナーの持続可能性における役割
ファスナーの選択の仕方は、持続可能な未来に向けて大きく貢献するファクターとなり得ます。そのためには環境に優しく耐久性のある素材で作られたファスナーを選択し、分解とリサイクル可能性を優先し、賢明な調達計画を立てます。
産業の持続可能性とファスナー
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、持続可能な開発目標“SDGs(Sustainable Development Goals)”。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。それ以来、国際社会は二酸化炭素排出量を削減し環境を保護しようと積極的に取り組んでいます。
こうした流れの中で、製造業においても持続可能性はますます重要な課題となっています。
残念なことに、ファスナーの選択が持続可能性を高めることはしばしば見過ごされがちです。しかしながらボルト、小ねじ、ナットなどのファスナーは多くの製品の必須部品であり、環境に優しいオプションを選ぶことで、製造プロセスの持続可能性に大きな影響を与えることが可能です。
RoHS指令/REACH規則とファスナー
ファスナーのサプライヤーがRoHS指令/REACH規則に準拠していることを確認することは、製造業に高い持続可能性をもたらすための良いスタート地点となります。
RoHS指令では、電気・電子機器の製造に、鉛、カドミウム、六価クロムなどの特定物質の使用が禁止されています。
REACH規則は、製造における化学物質の使用について透明性を確保し、化学物質の特性を欧州化学品庁(ECHA)の中央データベースに報告する責任を業界に課しています。
参考
RoHS指令
現行のRoHS指令【改正RoHS指令(RoHS2)】とは、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する2011年6月8日付け欧州議会・理事会指令2011/65/EU(Directive on the Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical Equipment)のことです。2003年2月に発効した最初の指令(欧州議会・理事会指令2002/95/EC)を改正し、最初の指令で電気・電子製品への使用を原則禁止されていた6物質に加え4物質が追加され、合計10物質となりました。
・鉛
・水銀
・六価クロム
・カドミウム
・ポリ臭化ビフェニル(PBB)
・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)
・フタル酸ジ-2-エチルへキシル(DEHP)
・フタル酸ブチルベンジル(BBP)
・フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)
・フタル酸ジイソブチル(DIBP)
規制濃度(閾値)についてはカドミウムのみ0.01wt%(100ppm)、それ以外の全ての禁止物質については0.1wt%(1000pm)とされています。
詳しくは日本貿易振興機構(ジェトロJETRO)の
RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU をご参考ください。
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-100602.html
REACH規則
REACH規則は、欧州連合 (EU) における化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則です。この法律は、2006年12月18日の欧州理事会での採決、2006年12月30日の官報公示を経て、2007年6月1日に発効しました。Registration(登録),Evaluation(評価),Authorization(認可) and Restriction(制限) of Chemicals(化学物質)の頭文字によりREACH(リーチ)と呼ばれています。REACH規則は、EUの法体系での「Regulation(規則)」で、EUの加盟国に適用される共通の法律です。EUに加盟していない、たとえば日本のような国の事業者は直接にはREACH規則の拘束を受けませんが、その事業者がEU域内に製品を輸出している場合には、EU域内の輸入業者がこの法律に従わなければなりません。
EU向けに輸出する化学製品に含まれる化学物質(調剤も含む)が年間1トン以上の場合、欧州既存商業化学物質リスト(EINECS)に登録されているか否かに関わらず、REACH規則に基づき、EU域内の輸入者もしくは「唯一の代理人(Only Representative)」が、欧州化学品庁(ECHA)に登録する必要があります。
詳しくは日本貿易振興機構(ジェトロJETRO)の
REACH規則と欧州既存商業化学物質リスト(EINECS):EU をご参考ください。
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-001101.html
環境に優しいファスナーの要素
環境に優しいコーティング・仕上げ
持続可能なファスナーのオプションの1つは、環境に優しいコーティングと仕上げを選択することです。その候補の一つはBossardが提供するトライボロジー ドライ コーティング ファスナー“ecosyn®-lubric (エコシン-ルーブリック)”シリーズです。このタイプのコーティングは非電解的に塗布された薄層皮膜で、統合された潤滑特性、接触腐食に対する保護を備えています。水素脆化のリスクがなく、廃棄物の可能性をさらに低減します。REACH規則、WEEE(電気電子廃棄物)指令に適応しており、RoHS指令やPOPs条約の規制物質も含まず、クリーンで環境に優しいコーティングです。
POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)
POPs条約は、 環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される(POPs:Persistent Organic Pollutants 残留性有機汚染物質 ポリ塩化ビフェニル(PCB)やDDT等)の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、またこれらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約です。
2001年5月にストックホルムで開催された外交会議において条約が採択され、2004年2月17日に締約国数が50に達し(日本は2002年8月に条約に加入)、その90日後の2004年5月17日に条約が発効しました。
対象物質は、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)における専門家による検討を経て、締約国会議において新たにPOPsに指定された物質が随時リストに追加されています。
詳しくは経済通産省の「POPs条約」ページをご覧ください。
経済通産省ホーム>政策について> 政策一覧 >安全・安心 >化学物質管理 >国際協調と調和の促進 >POPs条約
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pops.html
POPs条約事務局
https://www.pops.int/default.aspx
高いリサイクル性
環境に優しいオプションを選択するためには、ファスナーの寿命を考慮することも不可欠です。ファスナーは、分解が困難またはリサイクルできないものよりも、容易に分解して再利用またはリサイクルできるものであることは重要です。たとえば、ステンレス製ファスナーは、耐食性があり追加の仕上げが不要でリサイクルが容易なので、検討するのに最適な選択肢です。
DXによるロジスティクスの最適化
ビッグデータとリアルタイム分析によって使用量を長期にわたって追跡するなら、最適化されたスケジュールでの調達が可能になります。さらに、調達・配達時に現場へ直送するなどの工夫ができます。これらにより輸送や保管におけるエネルギーを削減できます。また分析により過剰在庫による無駄を排除することもできます。
ロジスティクス戦略においてBossardの ARIMS(アリムス) プラットフォームとスマート ファクトリー ロジスティックス(SFL)は、Cパーツ調達計画を最適化し、持続可能性への取り組みを支援するためのデータを提供します。
結論です。環境に優しいファスナーを選択することは、製造プロセスの持続可能性の向上に大きく貢献する重要な方法です。耐久性のある素材で作られたファスナーを選択し、分解とリサイクル可能性を優先し、賢明な調達計画を立てます。このようにしてメーカーはより持続可能な未来に向けて重要な一歩を踏み出すことができます。