ねじの話 「ドリルねじ」 vol.4 「働き長さ」を考慮する
ドリルねじは主に鋼板や硬質ボード、木材を鋼板に固定するファスナーとして卓越した締結作業性と信頼性、またコストパフォーマンスに優れたねじとして建築の現場で幅広く利用されています。ドリルねじの性能を十分に引き出すために必要な情報を6回のシリーズでお伝えします。第4回は「働き長さ」です。
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.1 ドリルねじの特徴とトラブルのメカニズム
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.2 「最大適応板厚」とは
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.3 断熱材等を挟む場合 木質材の取付け
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.4 「働き長さ」を考慮する
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.5 形状と機能
ねじの話 「ドリルねじ」 vol.6 頭部の種類とその特徴
「働き長さ」「呼び長さ」
ドリルねじ締結時のトラブル回避のためには適応板厚を理解することが大切ということを前回までシリーズで考慮しました。ドリルねじを使って被締結材を確実に固定するためには「働き長さ」(最小・最大)を考慮しドリルねじの呼び長さを選定する必要があります。
※「働き長さ」 ドリルねじで締結する取付け物と下地鋼材の厚みを加えた「長さ」です。
※「呼び長さ」 ねじを注文する際の「長さ」のことです。基本的にはおねじの座面(首下)から先端までの長さを言います。皿頭のように頭部高を含む物もあります。
「働き長さ」
ドリルねじの先端側のねじ山はタップとしての機能を果たします。それゆえに締結する際に完全なねじ山を下地鋼板と噛み合わせるためにはドリル部に加えねじ山3つ分(3ピッチ)が下地鋼板から突き出るようにします(この長さを「突き出し長さ」とも言います)。
また半ねじタイプでは首下にねじ山の無い軸部分が存在しますが、少なくともねじ山1ピッチ分が下地鋼板にかかってなければ固定できません。
これらのことを考慮に入れた最大・最小の「働き長さ」について解説します。
最大働き長さ
一般に最大働き長さは「下地材より完全に突き出たねじ部の3ピッチを除いた有効な締結長さ」とされます。
次のようにして計算できます。
(最大働き長さLg2)
=(ねじの呼び長さL)-{(テーパー部を含む切り刃の長さLn)+(3ピッチ)}
※「呼び長さ」はねじを注文する際に用いられる長さです。
通常は「呼び長さ」に頭部高さを含めませんが、皿頭は頭部高さを含めます。
最小働き長さ(半ねじタイプのみ)
半ねじタイプでは下地鋼板へねじ山が掛かるように最小働き長さも考慮します。
(最小働き長さLg1)
=(ねじの呼び長さL)-{(ねじ山の長さb)+(テーパー部を含む切り刃長さLn)-(1ピッチ)}
※ 半ねじ:頭部がある雄ねじを持ち、円筒部の一部にねじが切られているものです。首下の半分がねじ部という訳ではありません。
まとめると、ドリルねじで被締結材を確実に止めるために下地鋼板から少なくとも3ピッチが突き出るようにします。また、半ねじ使用の際には少なくともねじ山が1ピッチ分、下地鋼板に噛み合っていることを確認します。こうすることでドリルねじは被締結材を下地鋼板へしっかりと固定します。
次回「ドリルねじ Vol.5」はドリルねじの外観と機能にフォーカスします。