ねじの話 「止め輪」 第二回 止め輪の種類 軸用
止め輪は名前通りリング状なのですが、よく観察すると単純な輪ではなく様々な形状と種類があります。
ねじの話 「止め輪」
第一回 止め輪とは?
第二回 止め輪の種類 軸用(本稿)
第三回 止め輪の種類 穴用と止め輪の取付方向(近日公開)
第四回 止め輪の種類 特殊機能付きの止め輪(近日公開)
第五回 止め輪の材料(近日公開)
第六回 止め輪の熱処理・表面処理(近日公開)
止め輪は様々な所で役目を果たすために多様な形状をしています。
ちょっとJISを紐解いて見ると「日本産業規格 JIS B 2804:2010 止め輪 Retaining rings」には、C形偏心止め輪(軸用と穴用),C形同心止め輪(軸用と穴用),E形止め輪(軸用)及びグリップ止め輪(軸用)の6種類の止め輪の形状や特性について規定されています。
「止め輪」の分類には形状だけでなく、用途別の「軸用」と「穴用」、取付方向別の「スラスト取り付け」と「ラジアル取り付け」、あるいは軸への加工を必要とする「溝あり」と加工の必要のない「溝なし」などがあります。
これから「軸用」と「穴用」という使用場所による区別を軸にして見てみましょう。また取付方向の違いにも言及したいと思います。今回はまず「軸用」について詳しく見てみましょう
軸用止め輪(外止め輪)
軸用止め輪はその名の通り軸に設けた溝に装着し、部品の軸方向移動を防ぎます。軸の外側に配置されるので「外止め輪」と呼ばれることもあります。代表例は C形止め輪 と E形止め輪 です。
C形止め輪


軸用C形止め輪は円環の一部が切れたアルファベットの「C」のような形をしています。画像は偏心型で外径と内径の中心がずれていてリングの幅が先端部にかけて細くなっています。

偏心形は、装着時には溝壁と先端のギャップ部を除いてすべての面で軸に接触しているため、耐スラスト荷重性能が同心タイプより優れていると言われています。 なぜなら、偏心形は溝側壁との接触面積が大きく、荷重分布が均一になりやすいからです。

ラグ部の穴に工具先端を差し込み、専用のプライヤで拡げて軸に装着します(スラスト方向取り付け)。

握ると先端が開くリングを広げすぎないためのストッパーが付いている

こちらは直型

C形止め輪は保持力が強く精度が求められる箇所に使われます。
使用例:
・自動車トランスミッション内のギア保持
・ベアリングの外れ止め
・工作機械スピンドル部の軸保持
そして、こちらが軸用のC形同心止め輪です。サークリップとも呼ばれます。

同心止め輪は内径と外径の軸心が同一で、幅がギャップ部以外で一定です。偏心タイプに比べて固定力は劣るとされていますが、価格が安く経済的というのが一般的な評価です。
E形止め輪



軸用のE形止め輪はアルファベットの「E」のような大きく開いたリング状をしています。溝を加工した軸の側面からパチッとはめ込めます(軸の側面から取り付けるこの方式を「ラジアル方向取り付け」と呼びます)。着脱が容易で、部品の位置決めや抜け止めに向いており広く使われます。


作業効率をアップするためにE形止め輪には止め輪を連結したもの(スタックと呼ばれる)を装着して作業できるスタンドもあります。


- E形止め輪の使用例
- 小型モーターや送風機のシャフト
- プリンター・コピー機などのローラー固定部
- 自転車のペダル軸やハブ
クリセント止め輪
さらに軽荷重用に適応させた止め輪としてよく利用されるのが「クリセント止め輪」です。外径が小さく小型化できます。





U形止め輪
クリセント止め輪とは逆に、E形止め輪より高い荷重でも使用できるように設計されたのがU形止め輪です。



セルフロック式 軸用
ここまで見てきた止め輪には、いずれもシャフトにはめ込む溝加工が必要でした。これが「溝あり」タイプです。
それに対して、溝加工無しで軸・シャフトに固定できるセルフロック式止め輪と呼ばれる製品(「溝なし」タイプ)が軸用、穴用いずれにもあります。
セルフロック式は軸または穴への干渉による弾性変形と接触圧によって保持するので、溝を切らずに済み製品製造が簡単でコストを抑えられます。
加工レスで便利なセルフロック式止め輪ですが、すべての用途で最適で万能な止め輪というわけではありません。スラスト荷重・振動・温度変化が大きい用途には不向きです。そのため小型家電や日用品の簡易固定部やおもちゃ・軽負荷の樹脂製機構部等に使用されます。
グリップ止め輪
セルフロック式をいくつかご紹介します。グリップ止め輪(JIS B 2804:2010)は軸用セルフロック式の一例です。


プッシュナット軸用
プッシュナット軸用もセルフロックします。





次回は穴用について、また止め輪の取付方向の違いについてご紹介します。

















