ねじの話 ファスナー材料 金属 第三回 炭素鋼

今回はファスナーにも用いられる金属材料の「炭素鋼」に注目します。

ねじの話 ファスナー材料 金属 
第一回 金属とは
第二回 鉄鋼金属
第三回 炭素鋼
第四回 合金鋼(近日公開)
第五回 ステンレス鋼(近日公開)


炭素鋼


炭素鋼(carbon steel)とは、鉄と炭素の合金である鋼の一種で、炭素以外の含有元素の量が合金鋼に分類されない量以下の鋼です。加工が容易で廉価なので一般的によく使われる鉄鋼材料です。



炭素鋼は、炭素の含有量が多くなるほど、引張強さや硬度が増加します。一方で、靭性が減少し、被削性も低下してしまいます。



JISでは炭素含有量が少ない順に、「SPC材(冷間圧延鋼板)」「SS材(一般構造用圧延鋼材)」「SC材」(機械構造用炭素鋼鋼材)「SK材(炭素工具鋼鋼材)」などに分類されます。

これら炭素鋼の中で、ファスナー素材としてもよく用いられる鋼種を見てみましょう。


SPC材(冷間圧延鋼板)

SPC材

SPC(Steel Plate Cold)材は、冷間圧延鋼板とよばれ、常温に近い温度で圧延された板金用の鋼材です。炭素含有量が少なく、炭素鋼のなかではやわらかく伸びやすいため、加工性に優れていることが特徴です。またスポット溶接にも適しています。
SPC材には、一般用として多く使われている「SPHC」をはじめ、絞り用の「SPCD」や、深絞り用の「SPCE」SPCをさらに冷間圧延した「SPCC」などがあります。平座金にはSPHCを冷間圧延してつくられたSPCC(Steel Plate Cold Commercial)によって作成されます。


メリット
・表面が美しい
・加工性に富み成形しやすい
・材料の精度が高い
・比較的安価で入手しやすい

デメリット
・酸化しやすく、表面処理が必要
・長期保管には向いていない


SS材(一般構造用圧延鋼材)

SS材

SS(Steel Structure)材は、一般構造用圧延鋼材とよばれます。炭素量が少なく、熱処理をせずにそのまま使うことを前提とした材料です。SS材は他の金属材料に比べると安価で入手しやすいのが特徴です。また、加工性や溶接性などのバランスがよく、橋や船などの構造材や大型の機械や車両など、機械分野から建築分野まで幅広く使われています。ねじ加工で一般的に『SS材』と言えば、ほとんどの場合SS400を指し、最も使用頻度が高い材料です。
焼き入れはできず、錆びやすい素材なのでめっきや黒染めなどの防錆処理が必要です。SSの後の三桁の数字は、引張り強さ(N/㎟)を表しています。
JIS規格では引張強さの基準は設けてありますが、炭素の含有量などの規定はありません。


メリット
・安価で入手しやすい
・溶接しやすい
・板金や切削などの加工にも向いている
・汎用性が非常に高い

デメリット
・焼入れができない
・鉄鋼材料の中では軟らかい
・錆びやすいため、めっきや塗装などの腐食対策が必要


SC材(機械構造用炭素鋼鋼材)

SC材

SC(Steel Carbon)材は、機械構造用炭素鋼鋼材とよばれ、SS材と並んで使用頻度が高く、入手性が高い材料です。SS材にくらべて機械的強度が高く、焼き入れなどの熱処理によって耐摩耗性や硬さなどをコントロールできるため多く使われています。強度や耐久性が必要とされる産業機械の構造部品や、自動車のエンジン周辺部品、ベアリングや工具などに使われます。
一方で錆びやすく、油の塗布や塗装などの防錆処理が必要です。また、SC材は熱により性質を変えやすいため熱処理に向きますが溶接にはあまり向きません。代表的な材料には、「S45C」や「S30C」「S50C」などがあります。SとCの間の数字は炭素含有量(45であれば、0.45%)を表しています 。ねじではS45C材が一般的に使用されます。


メリット
・熱処理により強度を付与できる
・切削加工は熱処理前であれば行いやすい
・汎用性が高い

デメリット
・溶接には向かない
・板金にはあまり使われない
・錆びやすいため表面処理などが必要


SK材(炭素工具鋼鋼材)

SK材

SK(Steel Kougu)材は、炭素工具鋼鋼材とよばれ、高炭素鋼に分類される材料です。炭素の含有量が多く硬さや耐摩耗性に優れることから、名前の通り工具の材料として使用されます。ただし、SK材は十分な焼き入れをしても高温になると硬度が低下してしまうため、加工熱の伴うものでは長い寿命を期待できません。SK材は、熱の発生の比較的少ないタイプの工具や刃物をはじめ、ばね・ワッシャー・自動車部品などに採用されています。代表的な材料には、「SK140」や「SK85」などがあります。数字は炭素含有量を、SK140であれば、1.4%を表しています 。


メリット
・焼入れ・焼戻しで硬度を出すことが可能
・耐摩耗性に優れる

デメリット
・熱に弱い
・形状は基本的に丸棒や平鋼形状が中心で、バリエーションがない


ファスナー材料としての鉄鋼

鉄鋼は、材料として

①安価で量的に豊富で入手しやすい
②強度と靭性を兼備しており、冷間鍛造、冷間圧造、切削などの加工ができる。
③成分や熱処理を適切に選ぶことで、その性質を広範に変えることが可能


という優れた特質を持っているので、ねじ用材料の大半を占めています。
そして、ねじ用材料としては靭性の観点から炭素量が0.6%以下の鉄鋼が多く使われています。

ねじ用の材料として使用される鋼材は、「線材」や「棒材」の形を主にとり、これらを合わせて「条鋼」と呼びます。そしてコイル状に巻き取られた材料のうち、圧延で作られたままの状態のものは「線材(wire rod)」、線材にねじ用材料として熱処理・伸線などの加工がなされているものは「線(wire)」と呼んで区別しています。

ねじ用鋼材には鉄ー炭素系をベースとした炭素鋼と、鋼に強度、焼入れ性などの性能を与えるための合金元素(クロム、ニッケル、マンガン等)を添加した合金鋼があります。また、ボロン(ホウ素 元素記号B)を微量(約0.0008%)に加えることで焼入れ性を向上させたボロン鋼が開発され、省エネルギー、省資源の要求を満たすものとして利用されています。


ねじ用材料用の鋼材の主な規格
JIS G 3507 冷間圧造用炭素鋼線材(SWRCH)
JIS G 3508 冷間圧造用ボロン鋼線材(SWRCHB)
JIS G 3539 冷間圧造用炭素鋼線(SWCH)
JIS G 4051 機械構造用炭素鋼鋼材
JIS G 4052 焼入性を保証した構造用鋼材
JIS G 4102 ニッケルクロム鋼鋼材
JIS G 4103 ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材
JIS G 4104 クロム鋼鋼材
JIS G 4105 クロムモリブデン鋼鋼材
JIS G 4106 機械構造用マンガン鋼鋼材及びマンガンクロム鋼鋼材



ここまで「炭素鋼」についてみてきました。「鉄」に「炭素」を一定程度含有させることで様々な有用な機械特性を伸ばすことができます。また熱処理によって強度や硬度、また靭性といった特性のコントロールができるようになります。


「炭素鋼」に合金元素を添加することでさらに高機能な「合金鋼」を得ることができます。次回はこの「合金鋼」について調べてみましょう。


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