ボルト破損の6つの原因とその予防策

アプリケーション中のファスナーを破損させないために、主なボルト破損の原因6つとその対策をお話しします。

ボルト破損の6つの原因とその対策

アプリケーションのファスナー設計には、接合部を完全に分析する必要があります。発生する可能性のある障害の種類を理解することは、この分析に役立ちます。ボルトの破損を防ぐ方法についてご説明いたします。

過負荷(ストレッチ 延性破壊)

延性破壊

ファスナーは引張強さを超えた大きな力を受けると、大きな塑性変形が起こり、ついには破断します。この時、引張荷重は軸方向(長手方向)に働いています。

対策

– 適切な材料とグレード(強度区分)が使用されていることを確認する。

– 設計が十分に理解されていること、およびボルトに過度のストレスがかかっていないことを確認する。

疲れ(疲労破壊)

疲労破壊 破断面

静的荷重を受けているボルトが振動や曲げ荷重を繰り返し受けると、その荷重が弾性域内(引張強さよりもかなり小さなもの)であっても、突然破断します。延性破壊とは異なり大きな塑性変形は伴いません。

対策

– ボルトは伸びやすく、被締結物は伸びにくくする適切な材料とグレードを選択することで、ボルトの内外力比を小さくする。

– 適正締付け力の確保と維持に努める。初期締付け力を適正に設定し、必要なら増し締めをする。定期的なメンテナンスを計画し、ファスナーが緩んでいないことを確認する。

– ねじ山の負担を軽減するため、おねじとめねじのはめ合い長さを長くする。

かじり(焼付き)

かじり(焼付き)

「かじり」は接触している2つの金属が互いに付着する一種の冷間溶接プロセスとも言われます。特に、ステンレスファスナーで起こりやすく、発生すると金属表面同士が融着して一体化するので、引き剥がすのは困難になります。ねじ締結におけるかじりは、締付け時のねじ山同士の摩擦熱が主な原因です。

対策

– 潤滑剤を使用する。

– ファスナーの位置ずれを避ける。

– 高速締付けを避け、締付け速度を低く保つ。

–粗い表面を避け、滑らかな仕上げを使用する。

こちらのブログにステンレス鋼ファスナーのかじり対策についてより詳しく解説しています。

軸のせん断

ボルトへのせん断力

せん断は、物体内部のある面に沿って(面に平行方向に)両側部分を互いにずれさせるような作用です。ねじ・ボルトの場合、軸に垂直に互いに反対方向に作用する荷重となります。せん断力が働くと物体は力の方向に合わせて変形しようとし、変形しきれなくなると破壊的な切断がはじまります。せん断を利用した道具に「はさみ」があります。はさみは紙に対して上下にすれ違う力を利用して紙を「切断」しています。ボルトのせん断強度は通常引張強さの 60%~80%です。そして基本的としてボルトにせん断荷重がかかる使用は避けます。

対策

– 締結の方策を必ず再評価する。

– せん断部にねじ山部分ではなくシャンク部分(半ねじボルトのねじ山が切っていない部分)があたるようにする。

ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)

異種金属接触腐食

ガルバニック腐食は、腐食環境下で2つの異なる金属が接触すると発生します。自然電位の異なる金属に水や海水など(電解質溶液)がかかり、電子のやりとりが生まれることに起因します。一般にイオン化傾向の小さな(貴な)金属に電子が引っ張られ、イオン化傾向の大きな(碑な)金属がプラスイオンとなり腐食されると説明されます。

対策

– 異種金属の使用を避ける。

– 樹脂などで絶縁する。

– 湿気の閉じ込めを防ぐ。

– ファスナーを陰極(よりイオン化傾向の低い貴な金属)とする。貴な金属の表面積を卑な金属の表面積よりも相対的に小さくすることは、ガルバニック腐食を防ぐことに有効です。

水素脆化

水素脆化による破断面

水素脆化は、鋼材が水素を吸収することで靭性(粘り強さ)が低下して脆くなり、突然破壊する「遅れ破壊」を生じる現象です。金属がたくさんの水素を吸着したままでいると、時の経過により水素が集積し気体となり、製品中の体積が膨張。その結果、亀裂発生が生じ、脆性破壊を引き起こします。特に引張強さの高い金属(ハイテン)において起こりやすいことが報告されています。このため12.9以上の高強度のボルトに対しては、電解めっきを基本的に行いません。

遅れ破壊の発生条件

対策

– 影響を受けやすい合金、水素、ストレス(使用による、または残留応力)を排除する。

– 無電解めっきを使用する。–水素脆化が起こらない表面処理を選択する、またはめっきしない材質のファスナーを使用する。

– ベーキング処理を行う。

参考:ベーキング処理電解めっき処理はその過程で水素が発生し、いくらかはワークに吸収されます。電気めっきの被膜は緻密で水素の自然放出が起こることが殆ど無いため、吸着した水素を強制的に放出させる「ベーキング処理」を行います。一般的に亜鉛めっきの場合、めっき処理後4時間以内に180~200℃で4時間程度炉の中で加熱します。クロメート処理は、150℃以上の加熱により効果を失うので、ベーキング処理は電気亜鉛めっきとクロメート処理の間に行います。他の化成処理を行ったものも、できれば120℃で1時間程度のベーキングを施すとよいとされています。

これらまたは他のタイプのボルトの破損に関する詳細について、更にお知りになりたいですか?私たちにお気軽にお問い合わせください。

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