製造性・組立て性を考慮した設計《DfMA》において、ファスナー選択を最優先することの重要性
ファスナーの選択を最優先することは、高質な製品を最適なコストで生産し市場に供給するための『製造性・組立て性を考慮した設計《“DfMA” Design for Manufacturing and Assembly》』の成功に欠かせません。
用途に最適なファスナーを選択するのは難しい
用途に最適なファスナーを選択するのは難しい場合があります。また、すべてのファスナーが同じように製作されているわけではありません。それで、ファスナーの設計・仕上げ・材料の適正な選択は、品質の高い製品を組み立てる上での重要な違いを生むことができます。このためには設計プロセスの早い段階で可能な限り適切なファスナーを選択することが極めて重要であり、この考えが製造性・組立て性を考慮した設計 《“DfMA” Design for Manufacturing and Assembly》の概念を端的に示しています。
適切なファスナーを選択することの重要性とDfMAの原則が、パーツ選定過程での指針となる理由を詳しく見てみましょう。
製造性・組立て性を考慮した設計“DfMA”とは?
“DfMA”《製造性・組立て性を考慮した設計(Design for Manufacturing and Assembly )》または“DfM”《組立て性を考慮した設計(Design for Manufacturing )》には、組立て効率、コスト、品質を考慮して製品の設計を最適化することが含まれます。DfMA を採用するには、製品の設計段階からこれらの原則を念頭に置いて、コンポーネントまたは接合部をデザインする必要があります。
もちろん、製品を設計してからもファスナーを選択することはできます。でもこの手法では、組立てが非効率になったり、接合部が弱くなったり、入手困難または一般的ではない特殊なファスナーが必要になったりする可能性があります。
加えて、特殊なファスナーを使用することは次のような更なる問題を引き起こす可能性があります。
- 製造コストの大幅な上昇
- 製品の寿命の短縮
- 製品の故障の原因となる
- 製品パフォーマンスの問題につながる
- 市場投入までの時間の冗長による機会損失
製造性・組立て性を考慮した設計の原則によるファスナーの選択
製造性・組立て性を考慮した設計の原則の適用は、製品開発初期の設計段階で行う必要があり、これが最も効果的です。このDfMAコンセプトを初期段階で適用すれば、適切なファスナーを選択することができます。そして組立てプロセスの定義と工具の削減につながり、製造は効率的かつ費用対効果の高いものになります。
DfMAワークフローは、設計される特定のアプリケーションと部品に合わせてある程度柔軟に調整できますが、いくつかの一般的な DFMAにおける原則は次の通りです。
- 迅速かつ効率的に組み立てられるようにファスナーとオブジェクトを設計します。
- コストを節約するために、コンポーネントと材料の標準化に取り組みます。
- 部品数や複雑さを減らして設計をシンプルにします。
- 組立て中にファスナーに必要な製造工程の数を最小限に抑えます。
ファスナーの選択にDfMAの原則が重要なのはなぜ?
製造性・組立て性を考慮した設計は製品設計の進化の現われであり、より経済的に、より高品質の製品を効率よく生産するために活用できます。組立てプロセスにおいて、適切なファスナーの選択ほどDfMAに広範な影響を与えるコンポーネントはありません。
ファスナーの選択がDfMA計画の中心となるべき重要な理由とその利点は次の通りです。
- よりコスト効率の高い生産プロセスが構築できる
- 実績のある“専用ねじ”を設計に生かせる
- 市場投入までの時間の短縮が図れる
- 製品開発プロセスを簡素化できる
- 迅速な生産
- コンポーネントの組み合わせにより、組立て手順と部品数が削減される
- 迅速な欠陥や間違いの検出と除去
- 各段階で設計を改善・洗練することでの製品品質の向上
- より安全な作業環境の構築
適用すべきファスナーの基本ルール
ファスナーは2つのパーツを固定するように設計されています。このことを念頭に置いて、単純なファスナーに「より高い責任」を追加することを避け、設計の簡素化を図ることが最善です。
最適なファスナーを選択するためのいくつかの基本的なルールは次の通りです。
- ファスナーは常に組み立てられる部品と同等か、それ以上のものでなければなりません。
- ボルトで固定されたジョイントの締結部が絶対に弱点になってはなりません。
- 組み立てられたファスナーは常に制御可能で交換可能でなければなりません。
“DfMA”の原則を採用して、ファスナーを設計プロセスの最優先事項とするなら、前述のすべての利点やそれ以上の利点を引き出すことができます。
ファスナーを選択する上で気を付けるべき「盲点」については、こちらもご覧ください。