ファスナー材料 非鉄金属 アルミニウム 第四回 アルミニウムと腐食

ファスナー材料 非鉄金属 アルミニウム 
第一回 アルミニウムとは
第二回 アルミニウムの精錬とリサイクル
第三回 アルミニウムと接合
第四回 アルミニウムと腐食
第五回 アルミニウム  合金 種類 番号(近日公開)


ほとんどの金属は、酸素と結びついた酸化状態に戻ろうとします。この変化は腐食と呼ばれます。どんな金属でも腐食により強度が大幅に低下し、部分的な破損や亀裂、さらには完全な破損を引き起こす可能性があります。
アルミニウムも例外ではありません。今回はアルミニウムの腐食について理解を深めましょう。



アルミニウムは腐食します

アルミニウムも腐食します。それに対して「錆び」は鉄と鋼にのみ起こる特殊な腐食です。錆びは鉄酸化物の俗称で、鋼または鉄が酸化過程を経るときに発生します。錆びは鉄が酸化して剥がれ始めるとき私たちは「錆びが生じた」といいます。この剥がれによって下にある新しい金属が露出し、それがまた酸化して剥がれ落ちるという現象が絶えず繰り返されます。「鉄錆」をそのまま放置すると朽ち果ててしまいます。

鉄のような腐食のサイクルが生じないという意味でアルミニウムは錆びません。腐食に関する専門家のほとんどは、アルミニウムは腐食に強いという点に同意しています。


アルミニウムの腐食を理解する

アルミニウムの腐食とは、簡単に言えば、アルミニウム分子が酸化物に分解することです。その結果、アルミニウムの化学的および物理的特性が劣化します。時間の経過とともに発生する腐食の重大性と程度は、材質と動作環境によって異なります。それ故にアルミニウム部品の合金、環境、用途、使用方法に基づいて、腐食から保護する必要が生じます。

アルミニウムに影響を及ぼす可能性のある腐食を以下にいくつか挙げてみます。


均一腐食

均一腐食は、直径 1 マイクロメートルの穴として現れ、金属の表面全体にわたって厚さが一定に減少します。この腐食は、通常、溶解速度が 1 時間あたり数マイクロメートルから 1 年あたり数マイクロメートルの範囲の、非常に酸性またはアルカリ性の媒体で発生します。


孔食

孔食は、表面水、海水、湿った空気などの液体媒体との接触により、アルミニウムの表面に不均一な形状の凹みを生じます。腐食ピットは、アルミナから作られた白いゼラチンで覆われています。


粒界腐食

粒界腐食は微視的であり、金属の粒度レベルに影響を及ぼします。このタイプの腐食は、アルミニウムの機械的特性を低下させ、部品の破壊につながることがよくあります。粒界腐食の進行は、通常、ピットから始まります。


剥離腐食

剥離腐食は、圧延または押し出しの方向と平行に走る平面に選択的に影響を及ぼします。平面間の金属の薄いシートが剥がれることから、「剥離」という用語で呼ばれます。


応力腐食

応力腐食は、腐食環境と曲げなどの機械的応力が組み合わさって発生します。これらの要因はそれぞれ単独ではアルミニウムに影響しませんが、組み合わさると問題が発生します。機械的強度の高い合金を作ると、応力腐食を軽減できます。


糸状腐食

糸状腐食はラッカー塗装されたアルミニウムにのみ影響し、表面の外観が変わります。これは表面的な腐食で、大きさはわずか数十ミクロンです。傷、穴、切り口などのコーティングの欠陥から始まり、通常は数年後に現れます。


水線腐食

水線腐食は、その名の通り、水面のすぐ下にある金属の部分で発生します。これは、液体の表面とその真下の領域の間の空気の差によって発生します。


キャビテーション(cavitation 空洞現象)

キャビテーションは液体の流れの中で圧力差により短時間に泡の発生と消滅が起きる物理現象です。液体中に局所的に液体の圧力が下がることで気泡が発生し、その後崩壊します。この気泡の生成と崩壊に伴い非常に高い圧力や温度が発生して金属に丸い空洞を形成します。アルミニウムでは、表面に生じる酸化保護膜が絶えず破れて再形成が繰り返されることで損傷していきます。このタイプの損傷(腐食)は、液体の速度と温度に応じて、通常数時間または数日以内に発生します。金属を外部から硬化させると、このタイプの腐食を防ぐことができます。
キャビテーションそのものは、超音波を用いた洗浄や脂肪分解などに幅広い分野で応用されています。


浸食

浸食は、流れる液体などの移動する媒体によって発生し、流れの方向に合わせてアルミニウムに傷や波紋が生じます。浸食を軽減する方法としては、流体の速度を制御する、腐食防止剤を使用する、乱流を最小限に抑えるためにアルミニウムの形状を流線型にするなどがあります。


微生物腐食

アルミニウムの微生物腐食は、有機炭素源に含まれる特定の種類のバクテリアによって引き起こされます。これらのバクテリアは、有機物を二酸化炭素、有機酸、代謝産物に変換し、環境に放出します。アルミニウムを腐食させるのはバクテリアではなく環境です。それで腐食を防ぐには、水滴が付いたままの状態にしないことは重要です。微生物腐食を防ぐ有効な方法の1つは、水などの液体に溶ける殺菌剤(消毒剤)を使用することです。


アルミニウムの腐食を防ぐには?

アルミニウムの腐食は非常に深刻な問題となる可能性があるため、アルミニウムの腐食を防ぐために必要なあらゆる措置を講じる必要があります。取れる手段には次のようなものがあります。


適切な合金の選択

最初にして最も重要なことは、適切な合金を選択することです。経験則として、1000、3000、および 5000 シリーズのアルミニウムは、最高レベルの耐食性を提供します。


構造・媒体の検討

アルミニウムと鋼など、2つの異なる金属を隣り合わせに配置することで発生するのがガルバニック腐食(異種金属接触腐食とも言われます)です。雨水や塩水など電解質溶液が存在する環境下で、固有電位差の異なる金属が電気的に接触することで発生します。金属間の電位差によって2つの金属が電池となり電流が流れる、これが腐食の主な原因となります。

電子を失う側の金属(卑金属)側では金属イオンが溶液中に放出され、金属表面が侵食されます。電子を受け取る側の金属(貴金属)側では、溶液中のイオンが電子を受け取って固体の金属として析出するか、あるいは他の化学反応を引き起こします。

ガルバニック腐食の影響を最小限に抑えるためには、雰囲気(金属を包む気体などの環境)や金属の組み合わせ、また電解質溶液の侵入を防ぐ構造や異種金属間の電気的な絶縁を考慮することができます。一般に、組み合わせる物質の電位差が大きくなるほど、異種金属間腐食が生じやすくなります。また物質の自然電位は、電解質溶液の種類、溶液の流速、温度などによって変化するため、異種金属間腐食を生じさせないために使用環境に応じた材質選定が必要となります。また、樹脂製のワッシャなどを使用して異種金属間を電気的に絶縁する等も有効な対策です。


表面特性の変更・保護

化学変換コーティング、クラッディング、粉体塗装、陽極酸化処理(アルマイト処理)、またはベーマイトコーティングを適用して表面特性を変更します。 一般的に陽極酸化処理がファスナーに使用されます。

陽極酸化処理(アルマイト処理)

陽極酸化処理原理(アルマイト処理)

また、特定の環境では腐食が早まる可能性があるため、ラッカーまたはペイントの継続的な保護コーティングを使用することで腐食を防ぐことができます。



第4回はここまで。


次回のテーマはアルミニウム合金の種類と番号です。


類似投稿