製品づくりにおいて締結部品の選択は、生産現場の改善にとどまらず、環境への配慮を示す新たな鍵です。ねじの材質・製造方法・コーティングなども常に進化しており、“人にやさしく” “地球にやさしい”数多くの有用な製品や加工方法が生み出されています。
今 お使いのねじを再検討することで、生産性や環境性能・安全性・意匠性を高めることにつながる可能性があります。
冷間圧造品
切削加工品
切削加工は金属・プラスチックなどの素材を刃物を使用して削り製品を作り上げます。
切削加工の大きな特徴として、加工精度や表面粗さが自由に変えられるという点があげられます。また超微小製品から超大型製品まで多種多様な形状の製作が可能で、その他の方法では制作できないような複雑なねじの製作も可能です。金型が不要なため、初期投資が少なくて済み、費用はおおよそ制作個数に比例し、多品種少量生産、サンプル品の生産などにも対応できます。一方、削りくずが発生するため無駄が多くなったり、ファイバーフロー(繊維状組織)を切断するため強度が弱くなるというデメリットがあります。
製作方法は使用する工作機械の特性によって変わります。材質・硬度・形状・大きさに合わせ、製品に適した加工方法で製作いたします。同じ形状であっても加工工数を減らしたり、削りくずを減らしたりする工夫を重ねることでコスト削減を実現できます。
プレス加工品
プレス加工は金属の板材に金型を圧着(プレス)して成形することで、シンプルな形状から複雑な形状まで様々な形状を作り出すことができます。一枚の板材から継ぎ目のない製品を作るため、ファイバーフロー(繊維状組織)を切断することなく強度を保つことが可能です。
また生産性の高さから量産性に優れています。
デメリットとして、形状に合わせた金型を用いるためコストがかかる場合もあります。
自動車関係には高張力鋼板(ハイテン材)のプレス加工ねじが、一般的なねじには鋼板(「熱間圧延鋼板」と「冷間圧延鋼板」)加工ねじが用いられます。
曲げ加工品
曲げ加工では、生曲げから焼き曲げ、高精度スプリング等様々な用途に合わせて加工可能です。大量生産・様々な素材・複雑な形状に対応します。
土木・建築・自動車・自転車・建機・弱電・パイプ・配管取付金具・自転車・バイク部品・送電線取り付け部品・防音壁取り付け部品から医療器具部品・キッチン用品まで広く使われています。
金属を変形させる際、素材のひずみによるゆがみが生じるので注意が必要です。複雑な形状や湾曲を作る際は、寸法安定のため金型製作時のより精密な設計が必要となります。
特殊表面処理・ゆるみ止め品
ねじに特殊表面加工やゆるみ止め接着剤および樹脂をあらかじめ塗布することで、シール性やゆるみ止めの機能を持たせたり、ステンレスのかじりを防止することができます。現場で塗布・乾燥作業の手間や時間を省くことができ、製品の美観も損なわず、作業場や手を汚したりすることもありません。
目的や用途により様々な種類の処理があります。環境にやさしく安全性を高めた処理も多数あります。
特殊表面処理
環境や安全性を考慮した表面処理を多数取り扱っております。高耐食性・高耐薬品性・かじり(焼付き)防止・ゆるみ止めなど様々な特徴があり、最近では意匠性も兼ねた処理も人気です。非金属素材に施すことのできる処理もあります。海中構造物・屋外製品・食品加工機器・機械部品・電気部品・装身具・照明機器・家庭用品など、用途に合わせ最適な表面処理が選択可能です。
クロム化合物を一切含まないノンクロム塗装は、環境ニーズに適応、RoHS指令(鉛・カドミウム・ヒ素など)にも適合する新しい処理方法です。
ドライコーティング
二硫化モリブデン、フッ素樹脂などの固体潤滑剤を使用した潤滑処理です。高荷重下での潤滑・初期なじみ、腐食環境や真空中、放射線下の潤滑にも最適です。かじり(焼付き)防止、耐油性、摩擦抵抗の低減、耐摩耗性の向上に役立ちます。自動車・船舶などのエンジン・電気・電子機器・光学・精密機器分野に用いられます。
ノンクロム塗装
環境や安全性への配慮と耐食性の両立を実現する、人や地球にやさしいクロムフリーの高機能表面処理です。
製造業にとってクロムフリー処理を考慮することは不可欠な要素となりました。EU RoHS指令により、特定有害物質を含む製品のEU域内への輸出は規制されており、違反した場合、罰金や製品回収に加え輸入禁止などの処置が取られる場合もあります。またEU域外においても、RoHS指令をひな型とする同様の規制を施行している国も増加しています。
こうした時代の流れに対応した様々な処理の方法が開発されており、素材、用途により最適なものを選択可能です。
ゆるみ止め品
ねじ部にゆるみ止め加工を行うことにより、優れた締結を発揮し衝撃や振動によるゆるみを強力に防止します。自動車・産業機械・建築機械・航空機など多くの重要な箇所に長年採用されてきました。他の商品と併用する作業は不要、作業の効率化に役立ち、繰り返し利用することも可能です。ゆるみ止め加工は種類別に特徴があり、様々な形状に対応が可能です。
ポリアミドパッチコーティング
高弾性で耐摩耗性のあるポリアミドのコーティングにより、おねじとめねじの間の軸方向の遊びが埋められ、高密度で耐振動性のある接続を実現します。ほぼすべての素材に塗布可能で、再利用可能です。
医療機器・自転車部品・道路看板などに利用されています。アルコール、油分、シンナーへの耐性もあります。デメリットとしては、接着剤タイプに比べると固着力は弱くなります。
接着剤コーティング
接着剤や樹脂等がねじ山にあらかじめ塗布されているため、ねじ単体でロック機能やシール機能を持つことができます。作業効率が上がり、見た目の美しさも損ないません。接着剤の塗りムラや付け忘れ、塗布量の過少・過多を避けることもできます。金属材、樹脂材に塗布可能で耐薬性があります。手に着くことなく、無害です。
注意点として、医療用機器や食品関連機器に使用する場合は安全性を確認してください。なお、シール材の色は様々で統一基準はありません。
アンダーヘッドコーティング
ねじ頭、フランジ下に塗布することにより気密性を高めることができます。ほぼ全ての金属に塗布できるプラスチックコーティングで、水・油・空気・ガスなどの液体や気体の漏れを遮断するため、自動車・バイク・電気自動車・事務機器・電子機器から家電製品・ガスコンロまで幅広く用いられています。シーリング効果もあり。Oリング、ワッシャーも不要になります。締結後すぐに効果を発揮するのも特徴です。
繰り返し利用可能ですが、ゴムパッキンと比較して再利用回数は限られます。使用する期待や液体の種類によっては使用できない場合もございます。
樹脂・ゴム成型品
難削材・特殊材製品
難削材
スステンレス、チタンなど 材料そのものが切削しにくい素材、インコネル、ハステロイなどの新素材、マグネシウムなど出火防止対策が必要な素材などがあります。それぞれの特徴を生かし、航空機・医療機器・発電所・ジェットエンジン・スポーツカー・ごみ焼却炉など様々な分野で用いられています。
ニッケル合金
モネルメタル、インコネル、ハステロイB、ハステロイCなどの特殊材は、それぞれ耐腐食性・耐熱性・耐薬性など優れた効果を発揮するため、塩化物を含む有機プロセス・触媒システム・化学・石油化学産業・海洋構造物・パルプ・製紙工業などで使われています。
アルミ合金
耐食性・電食防止性があり、鉄やステンレスの1/3の比重で軽量化に役立ちます。溶接性にも優れており、車両・機械部品・光学機器・通信機器部品、またリベット用材としても用いられます。
セラミック
耐熱、耐薬品、絶縁、非磁(磁性を帯びない)性があるため、工業・医療・素粒子研究分野・半導体・液晶製造関連・真空装置・太陽光発電・燃料電池関連など、工業先端技術や次世代エコエネルギー分野に用いられています。耐薬品性、化学安定性を生かして生体親和性ねじ(歯科用インプラントなど)としても活用されています。